「それ、ほんと。」
「嘘だよね。
 そんなことあるはずないよ。」
私と柚沙は、哉輝の言葉を
疑った。

「嘘じゃないんだ。
 俺も詳しくは知らないんだけどさ、
 拓実のお爺さんってアパレル会社の
 社長さんで、拓実は御曹司らしんだ。」
「そんな話、聞いてないよ。」
「私も知らない。
 何それ、優衣穂は彼女なのに
 言ってないとか。」
「言えなかったんだと思う。」
「言えなかった?」
と、私は哉輝に聞いた。

柚沙は黙って聞いていた。

「うん。ほんとだったら
 今、拓実のお父さんが
 社長のはずなんだ。
 けど、実際は違う。
 
 拓実のお父さんの拓哉さんは
 家と縁を切った。」