紅茶の葉を入れる、宝石箱のような箱。
辛うじて中身は出はしなかったが、…底が外れていた。
…写真?
四つ折にされたそれは、まるで隠されるように紅茶箱の下から出てきた。
人のものを勝手に見るのは行儀がわるいと思ったが、それ以上に好奇心が勝る。
折り畳まれた写真を指先で開き、そこに写し出されている二人の人間に眉を潜めた。
「…リザさん…?」
花嫁衣裳を身にまとい、優雅に微笑むのは確かにリザさんだった。
彼女の肩に手を置き、同じように笑みを浮かべている男性には面識がなかったが…とても幸せそうな表情。
「…珍しい、赤の瞳…。兎みたい」
…これで髪の毛が黒じゃなくて白だったら完璧にウサギだったのに。
写真をもう一度四つ折にし、紅茶の箱の底に丁寧に直しこんだ。
電気を消して部屋を出れば、足音すら聞こえない静寂が私を包み込む。
それを振り切るように、カノンが待っている正門前に向かった。