私は企業への研修が一週間前に終わっており、その間学校もなかったため、いつものようにリザさんのお手伝いをしていた。

だがそれも今日で最後。

今日こそはレイに会いに行こうと意気込んでいるところだ。


「ふいー…完了…、と」


キーボードから手をどけ、入力の完了したテキストファイルを保存し、バックアップを取る。

さすがに容量が少ないため、数秒で終わる。

そのファイルを携帯型記憶媒体に入れ込み、…端末から引き抜く。


窓の外はもう夕焼けの優しい日差しが入り込み、部屋全体を赤く染め上げていた。

デスクの上に散らばった資料を片し、広げた端末の電源を切る。

するとまるで見計らったかのように、携帯が連動しメールが届いた。


「…カノン君からだ」


いつ私のアドレスを入手したかは知らないが…最近はまめにメールをしてくれていた。

ここ数週間、そんな日々が続いて…日課になりつつある。


 “外で待ってる”


短い、短いけれど内容が詰まった文章。

一瞬悪い意味ではなく心臓が高鳴り、それを抑えるように携帯を閉じた。


「…どうしようかなぁ…」


レイに会うべきだとはわかっているけれど、…わざわざ時間をかけてここまで迎えに来てくれた彼の気持ちにも答えたい。


「…もしかしたらまだ目覚めてないかな…連絡もないし」


結局、レイへのお見舞いは持ち越し。

携帯型記憶媒体をリザさんのデスクに置き、部屋を後にしようとした途端。

カシャン、と華奢な音を立てて何かを落としてしまった。