――プリンセスピンクの小さな建物に、赤い三角屋根に付いた煙突。

女子学生が可愛いというのは当たり前のような外装に、種類の豊富なクレープ。


「アリス、何食べる?」

「ん、・・・えっとアロエヨーグルト」

「じゃ僕は抹茶」

「今からおつくりいたしますので、少々お待ちください」


店員はクレープ皮を作るため、生地を熱くなった鉄板に流した。

トンボと呼ばれる調理器具で、生地を薄く・・・そして丸く伸ばしていく。

パレットナイフで焼いた生地を裏返した。


「お待たせしました。アロエヨーグルトと抹茶です。お早めにお召し上がりください」


カノンが小銭を払い、私にクレープを渡してくれた。

近くにあったベンチに腰掛け、先ほど受け取ったクレープを頬張る。

クレープのアロエヨーグルトはアイス状に固めてあった。


「んー・・・ひゅめひゃ~ひ(んー・・・つめた~い)」

「おいしい?じゃあ僕にも口移しで一口・・・ッ」

「だ・ま・れ」


冷たいアイスが口の中に広がって、甘ったるいクリームの味が爽やかになる。

焼きたての皮の暖かさでアイスが微妙に溶けて、不思議な味わいをかもし出していた。

ふと、カノンの視線に気づく。


「アリスはさ、僕とレイ・シャーナスどっちが好き?」

「レイに決まってるじゃない。討論することさえ不毛なほどに」

「…うわ、即答。僕ならさ、君をずっと守ってあげられるよ?あいつは…いつか君を裏切る」

「別にそれでも構わない。守られたいなんて思ってないし…私は、レイに助けられたから恩返ししたい。何より、どんな形であれ、彼の役に立ちたいのよ」


最後は使い古された玩具のように忘れられて、もう二度とその手のひらに収まることはないかもしれない。

一瞬でも彼の心にとどまれるのなら…それでも構わない。

もしも奇跡か何か起こって、ずっと手元に置かれることになったら…きっと私は幸せだ。

どんな形であれ、彼との時間を共有していたい。