『貴方も眠ったほうがいいわ。酷い顔色だもの。もうお腹は一杯?』
『本当に…ありがとう。服も、食事も。俺、どうお礼を言えばいいか…出来る事なら何でもするよ』
『いいの。親切ってね、いずれは自分に返ってくるものなの。だから気にしなくていいのよ?』
『…俺が、いつか百倍にして返す。今日の恩は、二度と忘れない』
深く頭を下げた俺は、いくつかキャロルさんと会話をした後に眠りこんでしまったらしい。
ソファーに身体を横たえて、久しぶりにたっぷり睡眠をとれた俺は背伸びをしてアンネローゼの具合を見に行く。
すやすやと寝息を立てるアンネローゼの傍で、本当の母親のように看病を続けるキャロルさん。
アンネローゼの額を覆っているタオルを水に浸し、冷やしてからまた額に乗せる。
『…代わるよ。それぐらいなら…俺でも出来るから』
『ありがとう。良く眠れたみたいね。じゃあ…代わってもらおうかしら。少し、疲れたから…』
『大丈夫か…俺、どうすれば…』
『いいのよ。…少し休めば、へい…きッ…』
ぎょっとするほど顔の青いキャロルさんは、覚束ない足取りで俺に洗面器を渡そうとする。
しかし俺の手は空を切り、洗面器は音を立てて落ち、床に水が撒き散った。
浅い呼吸を荒く始め、身体を痙攣させて引付けを起すキャロルさんに駆け寄り、崩れ落ちそうな体を抱きよせる。
苦しそうに息を繰り返すキャロルさんは、俺に何かを訴えようと口を動かす。