『アンネローゼ。調子はどうだ?』
『んんん~何なのですかこれ…ッ!入れないどころか、アクセスを求める事すら出来ないのですッ!誰がこんな事を…ッ』
『おいおい…ッお前が入れないセキュリティ?そんな物存在するわけッ…!』
『ひゃあっ!!弾き出されたのですッうぅうっデータ破損、修復開始!ノエルぅうっ!どういう事なのですか!?内部からでもまったく干渉できないなんてっ!』
人間が到達できない睡眠のレベル5まで意識レベルを下げる事により、一時的に意識下での脳内処理を停止させる。
そうする事により脳からの情報が送られなくなった記憶サーバーは、意識をパンドラ内での処理に移行する。
精神世界と呼ばれる場所には、一秒間の間に厖大なデータが蓄積されるのだ。
自動で最適化されるように設定はされているが、処理が追いつかなくなってしまっている。
メンテナンスも兼ねて未処理のデータを引っ張り出し、不要な物は削除していった。
『パンドラを一切介さず設定されたセキュリティ―…此処まで高度な物見たことないぞ。しかも、パンドラ内で処理をした形跡が一度もない。誰がこんなもの…ッ』
『あ、まってッ!ノエル、今すぐセキュリティー起動をッ!!』
『え、あ…ッげッ!!んだよそれっ!そんなもん俺の精神世界に連れ込むなッ!!』
『アリスのセキュリティーに紛れ込んでいたのですか!?駄目、弄っちゃ…っふああぁっ!!』
二つの不気味な影が見えたと思えば、それは俺の記憶内を縦横無尽に走り回り、ありったけのデータを展開する。
辛うじてアンネローゼが俺の補助に回ったが、先ほどの損傷が処理に響いていた。
俺もデータ展開をしていた為対応が遅れてしまい、相手の後手に回ってしまう。
二つの影は悪趣味にも俺の中で最低最悪の記憶を選び出し、笑い声を上げながら俺達に中身を見せた。