『――そ、んな…こんなのっ!帽子屋とハートのジャックがこんなにも早く接触していたなんてッ!これじゃ…もうどうしようもないのですッ…!アリスに何を言ったって…ッ!!』
『どうして帰る必要がある。施設を放火したのがハートのジャックだとしても、アリスには“何の関係もない”んだ。くだらない、そう言われてしまえば…お仕舞なんだよ』
『それは…ッ』
『此処から出たくない。俺達は…一体何のために…ッ!!』
施設が放火された後、俺は眠りネズミの手を引いて、何時間も逃げ続けた。
筋肉など殆ど付いていない身体は悲鳴を上げ、転げる眠りネズミを抱えて前へ進んだ。
それは全て、随分前に施設を去ったアリスに、身の危険が迫っていると告げる為だったのに。
ハートのジャックは先手を打ち、アリスを手中に収める事を成功していた。
『ハートのジャックは私達を殺そうとしたのですッ!アリスも殺されてしまうッ!!だってハートのジャックは白兎を庇ったアリスを撃ったのですッ…!だから…ッ!』
『俺達の事、何も覚えてなかった。パンドラ内の記憶サーバーにロックが掛けられているらしい。お前の方で設定を解除する事は出来るか?』
『…やってみるのです。アリスのはセキュリティーが特別仕様なのですよ。すこし突破するのに時間が掛るかもなのです。白兎は――』
『今はノエル・ラヴィンソンだ。終わるまでデータ整理をやってるよ』
『はい。ローズの事も…アンネローゼって呼んでください。ノエル…へへっ…なんだか、変な感じなのです』
厖大なデータの全てを見分け、アリスへと繋がる道筋を片っ端から試し続けるアンネローゼ。
アリスへのアタックを仕掛けるアンネローゼを待つ間、施設から出てからおざなりになっていたデータ整理を始める。
人間の睡眠のレベルは1~4までの段階を踏み、ノンレム睡眠、レム睡眠と交互に周期が繰り返される。
しかし、パンドラ内の記憶サーバーに意識移行する場合、完全に意識が遮断された状態でなければいけない。