「――アリス。着信は…レイ・シャーナスからみたいだけど…どうする?」

「どうするも何も…私はレイの役に立たないといけないもの。わかるでしょう」

「わからないな。アリス、今、君酷い顔してる。そんな顔をさせる根源がこれなら、早々に断つべきだと思うんだけど」

「…でも、レイにはまだ私が必要なの!だから…ッ」


震える指先で着信ボタンを押そうとしたら・・・画面が切り変わり、メールを受信する。

開こうとした瞬間、目の前に大きな手のひらが現れ――鈍い音と共に、床に何かが転がる音がした。

その音の先を追えば・・・無残にも折られて、中のコードがはみ出している私の携帯。


「は、はぁッ!?何してるのよ!!」

「諸悪の根源を絶っただけじゃないか。平気だよ、僕の1つあげるから」

「そ、・・・そういう問題じゃないッ!携帯を壊すなんて、・・・どうかしてるわッ!」

「あはは、怒った顔も可愛いね」


反発の声を上げる私に、軽くごめん、というが本人はさほど罪悪感を感じてないようで。

意味がわからない彼の行動に、余計怒りが募った。


「――ッもういいわッ!帰って!!」

「それは出来ないな」


断固として引かない態度の彼に苛立ちながらも、クローゼットに掛かっているコートを乱暴に羽織り、部屋を出ようとした。

だが、それを許さない、・・・彼の手。


「離して」

「嫌だ」

「カノン君・・・ッいい加減に――」

「いい加減にするのは君の方じゃないかな?さっきからレイ、レイレイレイって聞き飽きたんだけど。君、馬鹿じゃないからわかるよね?僕、今すごく不愉快なんだよ」


握られた手首に力が篭もり、その痛みに眉を顰めそうになったが、・・・カノンの声に目を見開く。

今まで見たこともないほどに取り乱している彼の顔に、・・・生唾を飲み込む。