目を瞑ったまま、連動する携帯を取ろうとした。

しかし、それを許さないとでも言うように私の腕ごとカノンに絡み取られる。

それに驚き瞼を開けば、酷く濡れた瞳と視線が交わった。


「…出ちゃ…駄目だよ」

「で、も…」

「いいから、…ね?」

「んッ…」


半ば強引に唇を重ねられ、何度も何度も啄ばまれる。

甘さなんて感じるわけないのに、優しく押し当てられる唇。

覚醒した脳が琥珀色のハチミツのようにトロトロに溶かされていく。


「…ッ…」


気づけば携帯の連動は終わっていた。

じんわりと熱い痺れが残る唇を、カノンが親指でなぞる。


「…レイ・シャーナスとは…もうしたの?」

「しないわ。だって私なんか…本当だったら相手にするわけないじゃない」

「君は、虚しいんだね。近くはいられるのに、隣にいる事は許されない」

「わかってる、わかっているの。貴方に言われなくてもそれは一番私が分かっていることだもの。だから…言わないでよ…ッ!!」


思いを汲み取るように頷いたカノンは、私を強く抱きしめてくれた。

心が離れているのはずいぶん前から知っていて、初めから近寄ってすらなかったのかもしれない。

それでも、レイの傍にいられるのなら…それでよかったのに。

頭の中が酷く交錯して、目を開くと涙しか出てこなくて。

きっとこんな姿を見られたら、レイに失望されてしまうと自分自身を嘲った。