「けど?」



わたしは、そっと手を握り返した。



「あんまり人の思いを背負いたくないな、って気持ちも正直あった」



桐生くんは目を伏せた。



「後でさ、友だちから『彼女、なんか、軽そうだしさ』っていうのを聞かされたとき、ああ、伝書鳩しなくてよかったって、思ったんだ。そんなこと、彼女に告げられないでしょ」



わたしは、ただうなずいた。



「僕は、臆病者なんだよ。問題が起こるのが嫌だから、避けられるものは避けようとする。聖菜に三郷さんとの関係を話さなかったのも、そう。知らなければそれで済んでいくって思ったから」



桐生くんは、目を伏せた。