「伶ちゃん?」

咲はきょとんとした顔で、伶を見つめる。


「さっきから何勝手なことばっかり言ってんの!? 何も知らないくせに!!」

「伶・・・いいよ、怒らないで」

「そういうの、余計なお世話って言うの!! 汐映が好き好んで、恋愛しないとでも思って・・」
「伶!! ・・・・だめ、言わないで」


伶の、続くであろう言葉を慌てて遮った。
伶は頭に血が上ると、ちょっと、見境が無くなる。
焦った・・・。


「だ、って・・こいつ・・っ」


伶は怒りが収まらないといったように、もの凄い形相でこっちを振り返る。


「何してんの?」


教室の入り口に、同じく幼なじみで、1つ年上の陽都(アキト)と静(シズカ)が立っていた。


「陽都!! 静!! こいつ、汐映にひどいこと言ったの!! 殴って」

「えぇ!?」


あまりの言葉に私の方が驚いて声を上げた。
2人が教室に入ってくる。

まさか、本当に殴ったりしないよね!?


「嫌だよ。汐映は男が女に手を出すの嫌うじゃん」

「つーか、落ち着けって」


陽都の言葉にほっと胸をなでおろして、静の言葉に共感して伶を見上げる。

でも、もっと衝撃的な言葉が伶の口から発せられた。


「じゃあ、私がやる!!」


咲の方へ手を振りかぶった伶を、陽都と静が止めようと反射的に動く。