多分、軽くぶつかっただけだった。
だから、すごいびっくりしてしまったのと、上がった瞬間のことで階段ぎりぎりに立っていたのが悪かったんだと思う。

そんなことを冷静に考えながらも、落ちると思った私はぎゅっと目をつむっていた。




「・・・・・っ、柳下、わ・・・るい、大丈夫!?」


目を開くと、私は羽瀬の腕の中だった。
羽瀬は階段に座って、手すりを掴んでいて、もう片方の手で私を強く抱きしめていた。
私は羽瀬の一段下に座って足を下に投げ出す感じになっていた。

どういう反射神経なんだろうと思った。
ぶつかった本人が、それを抱き留めるなんて、普通できるかな。


何でか、羽瀬の触っているところも、羽瀬とくっついてるところも熱い気がする。
急に心拍数が上がった気がしたし、また心臓が痛くなった。


「・・・柳下?」

まったく喋らない私を心配したらしく、手すりを掴んでいたはずの手までもが私の肩を掴む。
両肩を掴まれ、体を少し離される。
顔を覗き込まれる気配がしたので、顔を上げるとやっぱり心配そうな顔をした羽瀬と目が合った。


「あ・・・・平・・気・・ありがと、う・・」


さっきまであんなに色んな音が学校を包んでいたのに、今は
私の心臓の音と羽瀬の声しか聞こえないくらい
静になった気が、した。


「どこも痛くない?」

「・・・心臓、痛い」

「は!?」