あの人、お母さんを、見たこと。
咲の継母になっていたこと。

お兄ちゃんに話すと、眼鏡の奥の瞳が揺れたのがわかった。



あんまり気にするなって、私の頭をくしゃっと撫でたお兄ちゃん。

大好きなお兄ちゃん。



高校を卒業してすぐに就職して、施設から2人で出た。

あの部屋に戻るために。


お母さんたちとの思い出なんて、全然思い出せない。

でも、私の中はお兄ちゃんや、伶たちとの思い出で溢れていた。








辛い思い出だけ置いて私たちを捨てたあの親が許せない。

そんなのと幸せに暮らしてる咲が―――――