私たちのこと捨てといて、咲のことは愛せるの。

心の中に黒いものが広がっていく。
黒い黒い“何か”が私を塗りつぶしていく。



ごめんね
私、咲のこと、憎くてしょうがない・・・・・・。


唇を噛みしめ俯く。
午後の競技中ほとんどそうだった。


「汐映、汐映、涼司が2位を獲ったよ」


嬉しそうに羽瀬に手を振る咲の横顔が滲む。


どうしてだろう。
こんなに広い世界なのに、こんなにひどい縁がある?



母親を奪ったのは咲じゃない。
でも、私が母親を失ったとき、あんたは新しい母親ができてさぞ嬉しかったでしょうね。

それは

私が失った幸せだよ。


「汐映」

伶の声で我に返る。

「大丈夫?」