「・・・アタシ、帰るネ」

そう言うとアタシは、肩から提げていたバッグからお財布を取り出して、出来るだけはやく電車に乗れるように、suicaを抜き取りポケットにしまった。

「ん。気をつけてね。お母さん、気にしてたよ。あとで、電話でもしてやってよ。ユキ姉がいない時は、いつも『ユキが可哀想』って、泣いてるよ」

「・・・・・・」


カワイソウ?

カワイソウなのは、サクラ

捨てられてしまった

カワイソウなサクラ


だからアタシは

アタシたちは、サクラを、拾って・・・

拾って・・・


「ね、ユキ姉、来週の日曜日はさ・・・」

「ゴメン。その日は用事がある」


ウソ。

でも、ホント。


だって、ツバサくんといなければ。

今日だって、なんでアタシ、実家に帰って来たりしちゃったんだろう。

どうせ厭味を言われて、嫌な気持ちになるだけだって、解っていたのに・・・

アタシには、そんな無駄な時間はなかったのに・・・


「え?だってユキ姉『その日』は・・・」


『その日』なんて知らない。

『その日』なんて、知りたく、ない。


アタシはアユミに返事をしないまま

出来るだけ急いで

駅までの道を、歩いた------