「ツバサ・・・くん?」

ツバサくんの細い・・・けれど女性のやわらかさはない身体に

ふわりと包まれるように抱きしめられて

アタシは一瞬、彼の名前以外の言葉をなくしてしまう。


「ボクの姿が見えなくて、不安にさせちゃったんでしょ?ゴメンね、ボクが、悪かったよネ?」

ポンポンと、まるでオカーサンが泣いた子供をあやすように背中を叩かれて

アタシは、ツバサくんの体温があったかくて・・・

普段のアタシなら絶対にアリエナイんだけど

そのまま

ツバサくんの華奢な身体にしがみついて

「そうよ、ツバサくんが悪い」

と、言って、涙で濡れた顔を、彼の薄い胸で隠してしまった。

「うん。ボクが悪いよネ。一応コタツの上にメモ残しといたんだけどサ」

「だってそんなのワカンナイもん」

「だよね。うんうん、そうだ、ボクが悪い。例えユキさんの好きなノドグロの干物が商店街の朝市で安かったから寒い中並んで買って帰ってきたとしても・・・ボクが悪いよ。100パー、悪いのはボクってことで」

「そうよツバサくんが悪い。絶対、絶対悪いんだから」

「はいはい。今度から気をつけます。ってゆーか、玉子焼きの『コツ』を教えるまではどこにも行かないってば」

クスクスと笑って、ツバサくんはアタシから腕を離すと、ノドグロを狙っているサクラを抱っこして、鼻と鼻とを合わせるキスをした。