そっとふたを開けて、鍵盤を見つめる。







―――――ここに指を置いて、あの人はあたしのうたを弾いた。



あたしのなかで、何かが変わった瞬間。




鍵盤の上においた指に、力を込めてみた。











…ポンっ







一音、音が鳴る。







この数ある鍵盤の中から、蓮川祐希はあたしの歌を選び抜いた。






―――――あたしにも、できるかな…






ひとつ、深呼吸をする。



そして―――――――――




















「やっぱり…」




あたしにはできない。




今、オリジナルのメロディーであの歌を弾こうと思ったけど、指が動かなかった。