「俺の名前は蓮川祐希。あんたじゃないから」
と、突然男の人…蓮川祐希は、自己紹介を始めた。
「蓮川…祐希」
「お客さんの名前は?」
蓮川祐希が尋ねてくる。
あたし、あたしの名前は…
「涼宮奏花」
「そう。それじゃあ、涼宮奏花さんのために、特別な一曲を弾いて差し上げましょう」
ちらっとこっちを見て、蓮川祐希が笑う。
その笑顔は、とってもキレイだったのに、なぜだか一瞬消えてしまいそうに見えて、あたしは思わずまばたきをした。
まばたきし終わったあとには、蓮川祐希はもう前を向いていて。
あたしは、小さく息を飲む。
鍵盤の上に、長くてキレイな指が置かれた瞬間。