トライアングル、ラブ


西澤さんが現れてから、1ヶ月が過ぎようとしていた。

季節は学園祭の時期になった。


「学園祭の運営委員を決めなきゃいけねぇーんだけど……
やるやつー。
ま、いねぇーわな。」


そう言うと、担任はごそごそとくじ引き用の箱を取り出して……。
因みいうと、あたしの担任は若いのに、有り得ないくらいのめんどくさがり。
なら、教師になるなよっておもうけど…。


だからか知らないけど、代表を決める際には、くじが出来るように教室に常に置いてある。


先生は、箱から二枚の紙を取り出した。


「えっと、この番号は……宮原と浅倉だな。
お前ら、よろしく頼むな。」


あれ?
今、浅倉って呼ばなかった?
あたしは、振り返って美夜と雅を見る。

雅は、笑っていたし。
美夜は、苦笑いして頑張ってと口パクしていた。


「あたしかー。」


二人を見て、あたしだとおもい知らされる。


「浅倉、行くぞ。」


雄貴に呼ばれ、あたしは委員会がある場所についていく。



「学園祭の運営委員って何すんの?」


「さぁ?」


なんでか、あたしたちには見えない壁が出来たみたいに気まずかった。
1ヶ月話していなかっただけでこんなに変わるのかな?


そう思うと悲しくなり、あたしは口を閉じた。


「あ、恭ちゃんだ。」


「恭介。」


あたしたちは、恭ちゃんを入って直ぐに見つけた。


「なんだ、お前らも一緒かよ。よろしくな。」


「恭ちゃんがいるなら、サボってもフォローしてくれそうだね。」


「馬鹿お前、サボる気かよ。」


「えへへ、当たり前じゃん。
ね、雄貴。
……あれ?」


振り返って、雄貴を見ると雄貴は席に着いていた。
いつもなら、会話に入ってくるのに。
いつもなら、笑いながら同意してくれるのに……


「………。」


恭ちゃんは、何も言わずに肩を軽く叩いて席に座った。



あたしは、クラスごとに座るようになっている為、雄貴の隣に座った。


「わぁー、宮原くんだ。」


可愛らしい声と共に、あたしたちが座っている所にむかって来た、西澤さん。


「あ、浅倉さんも一緒なんだねー。よろしく。」


一瞬、なんでコイツいるわけ?みたいな冷たい表情になって、瞬時にいつものようにニコニコした表情に戻った。


「西澤さんも、委員になったんだね。」


「そうなんだよね。
ま、宮原くんが居るなら、委員になってよかった。」


西澤さんは、ニコニコ笑って自分の席に戻った。


波瀾万丈の学園祭が始まろうとしていた。
あたしたち二人の仲に、小さな亀裂が入ることになるなんて、この時は、まだ知らなかった。


そして、全部。
西澤毬乃の手の平で動いていたなんて……。


歯車は、すでに狂いだしていた。



あたしたちのクラスでの出し物は、無難なカフェとなった。

ベタすぎて、呆れちゃったのは言うまでもない。


「飲み物は、何がいる?」


「お菓子は、何注文するの?」


いつもより、騒がしいけど着々と準備は順調に進んでいた。
一度火が付いたら、うちのクラスはとことん追求してしまう。
あーじゃない、こーじゃない。色々な意見を言いながら進めていく。


「わかってる?
予算内に納めてよ?」


「はーい」っと声が聞こえるのを聞くと、あたしは体育館に向かった。


「ごめん、遅くなった。」


あたしは、今体育館で練習している演劇部のもとにいる。


「いいよ。
気にしないで……。
コッチだって無理矢理出演して貰うんだし。」


演劇部の部長さんが、あたしにニッコリと笑っていった。
え?どうして演劇部?
何故にこうなったのかと言うとこうなったのには、ちょっとした訳があって……



=回想=

「お願い、爽華。
私をいや、私達を助けると思って。」


は?
いきなり、朝来たら雅があたしに頭を下げてお願いしてる。


「いや、状況が掴めないんだけど……。」


雅が話すには、演劇を上映するにも人数が足りなくて上映出来ないでいたらしい。

学校でやる最後の演劇だから、何が何でも、出演したいそうで……


「で、あたしに出てほしいと?」


雅は、コクコクと頭を上下に揺らす。


「さっしがよくて、いいね~。だから、ね。」


「あたしが、断れないこと知ってて頼んだでしょ?」


「ピンポーン。」


雅に呆れてため息をつきながら「いいよ」っと返事をした。


「美夜は?」


「私は、無理だよ。
大きな声とか出ないしね。」


美夜は、なんとか出演を免れたらしい。
しかも、恋愛物なんだとか……。

あぁーあ、それなら断ればよかった。


=回想終わり=


別に、頼まれたからちゃんとするけどさ。
まさかの主演ってどうよ。


演劇部の出し物だよ?
なんで何も関係がないあたしが主演とかしちゃってるわけ?


雅に問いただすと、
「言ってなかったっけ?」とか惚けだすし。
雄貴は、笑いながら頑張れよしか言わなかったし。


そういうことがありながらも、着々と学園祭までの時間は刻一刻と迫っていった。

クラスの方も、雄貴と美夜がフォローしてくれたりしながら順調に準備は進んでるみたい。



美夜が言ってたけど、ここ最近西澤さんがクラスにやって来てないって。


西澤さんがクラスにやって来てないって言われた時に、気がつくべきだった。
西澤毬乃によって、あたしたちが振り回されることになるなんて。



  =学園祭当日=

「ヤバい、緊張してきた。」


人生初の劇ってなんか、緊張するもんだ。
そしてね、結構人入ってんだ。


「駄目だ、雄貴。
あたし、下りる。」


「コラコラ、逃げんな。
大丈夫だ、何も心配いらねぇーじゃん。
いつも通りしたらいいしな。」


にししって笑う雄貴を見てたら、なんか緊張してた自分が馬鹿みたいに思えてくる。




「そろそろ、スタンバイだよ。頑張っていくよ~。」


そう掛け声がかけられた10分後、あたしたちの劇が行われた。

劇の内容は、
シンデレラと白雪姫がモチーフになって創られていて、それでいて、現代風にアレンジを加えてあるみたい。
そんな話。




「部長!!
大変です。」


本番2分前に、演劇部員の子が酷く慌てて舞台裏に駆け込んできた。


「本宮くんが、昨日マンションの階段から滑って足を骨折したそうなんです。」


「は?
骨折しただと!?」


本宮くんは、あたしの相手役の人で、結構主要キャラだ。
いや、結構じゃなくて重要だと思う。


「どうすんだよ!!
骨折じゃあ、出演できないじゃないか。」


「部長、どうしますか。
代役が……。」


「だれか、しっかりと台詞覚えている人はいないのか?!」


部長が頭を悩ませている間に劇は、開幕してしまった。



「私の運命の人は誰かしら?
鏡さん、教えて欲しいわ。」


「なら、森に行くといいですよ?
きっと運命の人に巡り会いますから。」


由紀(爽華の演じてる役名)は、運命の人に巡り会うが為に森に向かった。

森は意外と深くて道に迷ってしまう。


そこに現れるのは、由紀が探していた運命の人なんだけど、今そいついないじゃん。


「道に迷っちゃった。
どうしたら家に帰れるの?」


この後に、運命の人が登場するだけど……
あたしは、チラッと舞台袖をみると、部長がカンペをだしていた。

『そのまま続けて。』って。
それを信じて、あたしは再び演技を続ける。


「誰か、私を助けて下さい。」


「大丈夫ですか?」


「誰?」


あれ?
雄貴……だよね。
なんで、雄貴が出てきてんの?
おかしいなと思いつつ、今は上演を止めない為に、続けた。


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