トライアングル、ラブ


あれから、あたしたちの関係は相変わらずで。


それでも月日だけは過ぎていって、気がついたらあたしたちは高校2年生の終わりをつげようとしていた。


「とうとう、3年生か……。
クラス替えがないから、実感ないよね。」


「確かに……。」


「でも、このクラスでよかったかも……ね。」


あたしと雅と美夜は、しみじみと思い出に浸っていた。



  =放課後=



「え、あたしが呼び出し?
誰から?」


さぁ?と雅は、言って帰っていった。


「私達も、さっき爽華呼んできてほしいって言われたから……よくわかんない、とりあえずごめんね。」


美夜は、早口に言って雅の後を追っかけてしまった。


とりあえず、呼び出しをくらったんなら仕方ない。
爽華は、面倒くさそうに指定された場所にむかった。



「……ね、聞いてる?
唯ってば!!」


『聞いてるわよ、で。
どうしたの?返事言ったの?』

「そりゃ、丁重にお断りしましたよ。」


『なら、いいじゃん。』


「だって、告白なんて慣れてないからさ……」


そう、あたしはあの時に呼び出されて告白を受けたのだ。
あたしは、雄貴が好きだから他の誰かと付き合うとか考えられない。
だから、可哀相だけど断ってしまった。


「はぁー、なんかやだな。」


『なにがー、もう用件終わったんなら切るよ?
明日、早いんだよ。』


と言って、唯は無理矢理電話を切った。


「え、ちょっ……唯。
あ、切れちゃったか。」


もうちょっと、真剣に聞いてくれてもいいじゃんか。


告白か……。



「で、どうだった?」

次の日の朝、雅と美夜は今、学校に到着したあたしの元にやってきた。


「なにが……?」


いきなりすぎて、あたしはわからなかった。

すると、雅はハァーとため息をはいた。



いや、朝からため息とか気分悪いな。


「告白された?」


美夜は、目をキラキラさせて聞いてきた。


「は?……あ、昨日のね。」


「断ったの?
なんで、結構なイケメンだったじゃない。」


「みやちゃん、イケメンとか関係ないと思うよ?」


美夜のツッコミに笑いがこぼれた。


=放課後=


「聞いたぜ。
告白されたんだってな。」


一緒に帰っていた恭ちゃんが、ニヤニヤしながら聞いてきた。


「誰に……唯か。」


「断ったんだってな。
相変わらず、お前は雄貴好きなんだよな。」


「なぁ!!
なんで、知ってんの。」


恭ちゃんは、冷静に見てたら嫌でも分かるさ、と言ってきた。まさか、雄貴にも……!!


一人雄貴にばれたと思いパニクってたら、恭ちゃんが言った。「雄貴は、気づいてないだろう」って。


あたしたちは、そのまま近くの公園に立ち寄った。


「告白しないのかよ。」


「しないよ。」


恭ちゃんの質問にあたしは、即答で答えた。


「だって、あたし。
このままが好きなんだ。
雄貴がいて、恭ちゃんや唯。それに、皆がいて。
誰か、一人欠けるなんて有り得ないし、嫌なの。」


恭ちゃんは、あたしの話しを真剣に聞いてくれた。


「だから、さ。
あたしがもし、告白してフられたら……
今の関係じゃなくなるかもでしょ?
なら、あたしはこのまま何もしないほうがいい。
ね。」


「それって、辛くねーか?」


「大丈夫、あたしの意思だからさ。」



恭ちゃんは、あたしを見つめて頭をポンっと撫でた。


「また、子供扱いしてー。」


ずっとこのまま、何にも変わらずに続いていけば良いってどれだけ思ったか。


でも………

恭ちゃんと話してから、数ヶ月が経ち、あたしたちはとうとう最終学年、3年生となった。



「いいか、3年生になったんだ。進路実現の為、一緒懸命がんばるんだぞ。」


担任の話しが淡々と続いていく中で、あたしだけは桜を見つめていた。


「……ら。浅倉!!」


先生の声にビックリして、思わず立ってしまう。


「聞いてたか?
いいか、気を引き締めていくんだぞ。」


「あ、はい。」


座れ、と先生に言われて、椅子に腰をかける。









先生の話しが終わって、雄貴があたしの元に来た。


「何、見てたんだ?」


「桜。
変わらないなって思って。」


雄貴は、笑っていった。
「変わるわけないだろ」って。


「そうだね。
雄貴はさ……「おーい、雄貴。お前に客だぞ。」


クラスの男子の呼ぶ声が、あたしの言葉を遮った。


「あぁ、今行く。
って浅倉なんか言った?」


「ううん、なんでもない。
行ってきな?」


雄貴は、不思議そうに教室のドアに向かった。



ドアの方を見るとそこには……


「女の子?」


「西澤毬乃だね、あれ。」


振り向くと、雅と美夜がいた。


「結構、人気あるってさ。
西澤毬乃。」


ふぅーん。
可愛いもんね、おしとやかそうで。
なんか、守ってあげたくなりそうな。


「西澤毬乃……。どっかで聞いたような。」


美夜は、一人難しそうな顔をしていた。
それを知らないあたしは、ただ単に、西澤毬乃のことが気にかかっていた。


「何の用だろう。」


「あれあれ、何か気になってる感じ?」


「別にそんなんじゃないんだけどさ。」


なんか……。



=放課後=

「もー、なんで先に帰るかな?」


今日に限って二人とも先に帰るんだもん。
待っててくれてもいいじゃんかよー。


「浅倉さん?」


「ん?」


そこには、笑顔でこっちを見る西澤毬乃がいた。


「えっと……西澤さんだよね。どうしたの?」


「私、浅倉さんとお喋りしてみたかったの!」


あたしとお喋りして見たかった?
その時は、何も知らないでいたあたしは普通に西澤さんと話していた。



「ふはぁー。」


お風呂から上がったあたしは、勢いよくベットにダイブした。
下駄箱で西澤さんに会って、普通に会話した。


「あれって、雄貴のこと……」


聞いてきたのは、終始雄貴のことだった。
雄貴ってどんなタイプが好きなのとか、彼女いるのとか……。

あたしじゃなく、雄貴に聞いたらいいと言ったら、
『恥ずかしくて聞けない。』
って言ってた。


それって、雄貴のこと好きなんだよな。



「西澤さん、可愛いもんな。」


もし、あたしが男で西澤さんに告白されたら、即OKって言っちゃいそうだな。

そういえば……

「雄貴って好きな子いるのかな?」


好きな子の話しとか聞いたことないもんな。

結構長い付き合いなんだけどな。実際言ったらあたし雄貴のことそれ程知らないのかも……。


それからと言うと、西澤毬乃は毎日のように雄貴に逢いに来ていた。

雄貴も、段々とめんどくさそうにしていた。


「アピール凄いね。
いいの?負けちゃうよ。」


「は、意味わかんない。
別に勝負とかしてないし。
あたしには、関係ない。」


とか言いつつ、実際は凄く気にしていた。

時たま、雄貴が会話中にあたしを呼んでむちゃぶりをしたりする。


あたしが、会話に入るだけで西澤毬乃は凄く嫌な顔を一瞬浮かべて直ぐさまニッコリと笑っている。


あからさまに嫌な顔しなくても良くない?
あたしだって、好きで呼ばれてるんじゃないんだから。


「そういえば、最近二人で喋ってる所見ないね。」


それもそのはず、休憩時間になると西澤毬乃は雄貴の元にやって来ているから、二人で喋る時間がない。


「はぁー、いつまで続くのかなー。」


「あの子が諦めるまででしょ。ね、美夜……?どうしたの?考え混んで。」


「ううん、大したことじゃないんだけど……気になることがあってね。」


そういうと、美夜は話しだした。
西澤毬乃のこと。



美夜がいうには、人違いかもしれないけど。

美夜が通ってた中学の友達が、『まりの』という子に彼氏を乗っ取られたらしい。


なんでも、相思相愛な皆も羨むカップルだったんだけど、いきなり彼氏のほうが、別れを告げてきたんだそうだ。

誰もが、突然の別れに疑問を浮かべていた。
その原因を造ったのは、他でもない、『まりの』と言う子だったと言う。

『まりの』は、どんなに汚い手を使ってでも、手に入れようとしていた。


そういう人だそうだ。


その人の名前は、『西澤毬乃』という名前じゃなくて、『石田まりの』という名前だったからもしかしたら、人違いかもしれないって美夜が言っていた。


でも、雅はあながち人違いじゃないって断言していた。
雅は、『気をつけな!』って言っていた。