大人として、一社会人として。
本当はそんなこと、もっと早くに今までの事務所に迷惑かけて辞める前に気付いてなきゃいけなかったんだけど。
世間知らずで自己中な俺はその時初めてわかったんだ。
そんな半人前の自分が今まで一体何をのぼせ上がり、仕事の選り好んだり客に意見してたのかと思うと恥ずかしかった。
でもそのことに気付けただけきっと俺はましだ。
社長の懐の深さを知って、感謝の念さえ湧いた。
こんな俺を受け入れてくれて、仕事もチャンスも与えてくれた社長に恥かかすような真似は絶対にしちゃいけない。
ここでもう一度、一からやり直そう。
そう思って、自分の愚かさに気付けたから今の俺がいる。
だから今まで社長が回してくれる仕事を蹴ったことなんて一度もない。
だけど今回ばかりはちょっと…―――。