素直が一番歩きたいと思ってる。
自分の足で歩きたい。走りたい。

あの事故に遭ってからずっとそう願ってきたことだろう。

辛くもどかしいリハビリを耐え、ずっと続けてきたのは歩きたいからだ。


それは何年も隣で見続けてきた俺が一番わかってる。

わかってるからこそ、あえて俺は言うんだ。


右手に持っていたコーヒーカップをソーサーに置き、俺も素直を真っ直ぐ見つめてから口を開いた。


「無理…してないか?」


「うん。」


「焦ってないか?」


「うん。」


目を逸らさずに真っ直ぐ見つめ返して力強く答える素直。