逃げるように、転げるようにあいつの病室を後にした俺はそのまま家路に着いた。


真っ暗な家に着いてから俺は何も手につかなくて。


電気をつけることもジャケットを脱ぐことさえもせずにただボーッと、今日の出来事がずっと頭の中で再生されていた。


以前とまったく変わってしまった彼女が悲しいとか、寂しいとか…そういう感情よりも何だか胸にポッカリでっかい穴が空いた気分だ。


遠藤の言う通り…“彼女は死んだ”…−−その言葉がピッタリだ。


どうにかしたい。助けたい。出来ることなら歩けるようになってほしい。

だけど…どうにもならない。


あんなに痩せちゃ体力もないだろう。

刺を張り巡らせて周りを寄せつけないで…。


彼女の置かれた境遇を思うと胸がしめつけられた。