−−−…そこからのことはまるで…スローモーションのようだった。
俺に「帰れ!」と尚も叫び、興奮するあいつを必死で宥めている遠藤。
その横でナースコールを押して医者を呼ぶよう手配するナース。
それらが俺にはスローモーションのようにゆっくりと見えていた。
飛び交ってるはずの言葉も、喧騒も。俺には何も聞こえてこなくて。
目の前の光景はしっかり目にも脳にも伝達されているのに、どこか遠く、そして他人事のようだった。
自分がここに存在していないような。まるで夢の中の出来事のような。
どこか現実味がなく、だけどそれでいて彼女に言われた言葉にしっかり傷ついてはいて…−−。
医者と共に入ってきた何人かのナースが彼女を押さえ付け、鎮静剤らしき注射を彼女に打つ頃、俺は漸く我に返り逃げるように部屋を後にした…−−−−−。