社長が原稿を真剣に読んでくれてる間、俺は落ち着かなかった。
普段なら『出来た〜』って社長室に原稿持って行って、『不満あったら連絡して〜』って言って机の上に置いてさっさと帰るのに。
今回は手直しを要求されても時間がないからその場ですぐ直さなきゃならないってのもあるから残ってんだけど。
でも本当は今回の仕事は俺なりに思い入れがあって、力が入った作品だけに率直な意見を聞きたいってのがあった。
遠慮や世辞を使わない、本音で付き合える社長の意見が聞きたかった。
読み終えた社長は原稿から顔を上げ、俺をジッ…と見つめ。
「……これほどまでとはな…」
「…どういう意味だ…?」
「さすが樹だな。
ちゃんと相手の懐に入り込めてる。彼女の本質がちゃんと表されてる」
「ほ、本当に!?」