幸い、さっきまで仕事浸けだったから今夜は酒を一滴も飲んでない。


「たまには動かしてやらねぇとな…。」


そう呟くと、マンションの地下で眠ってる愛車に乗り込み社長宅目指して夜明け前の街を走らせた。


30分程で社長宅に着いて、エンジンを切るや否や社長は家から飛び出てきて俺を迎えてくれて。


「入れ、入れ!」と促され、「飲め、飲め!」とビールをすすめられ。


車できたっつぅのに聞いちゃぁいねぇ。


「原稿、原稿!」と、急かす社長にちょっと緊張しながら出来立てホヤホヤの原稿を渡した…−−−。


ヒヤヒヤ…いや、ドキドキ。……どっちもだ。


カチッ、カチッ…。


やけに時計の音が気になるし。


カサッ…。


原稿をめくる音がやけに大きく聞こえる。


社長の目が上から下へ、下から上へ。