――平和だ。



 教壇で今日の政治云々を熱弁する教師。
 机に伏せている大半の生徒達。
 葉桜の目立つ季節。晴天の午後はそれだけで学生の眠気を誘う。

 睡眠学習とはある意味こう言う事を指すのかもしれないと、辻 里美はぼんやり思いながら視線を左に向けると、“彼女”はその左に映る四角い空を見ていた。

 彼女――樋口小春――は私の親友だ。中三の時に転校してきた小春は引越し先も私ん家の近くのマンションだったためすぐ親しくなった。

 高校も一緒、クラスも一緒 、しかも席替えで小春とお隣さん。これは腐れ縁の兆候ではないのかと最近本気で思っている。



――そう言えば小春、授業中ずっと空見てる……



 授業を受ける訳でもなく、寝るのでもなく。授業が始まってから、否、今日はずっとこの調子でろくに顔を合わせてないし、授業だって聞いてないだろう。

 そう言う里美も膝の上にファッション雑誌を開いているのだが。



 結局、終業のチャイムが鳴って、先生が教室を後にするまで、小春の顔を伺う事はできなかった。