「ねぇ、朔夜くん。今日もお兄さん達とご飯なの??」



「たまには一緒に食べようよ~」



「ごめん。兄弟で食わないと兄貴らがうるさいんだ」





不満そうなクラスメイト達に別れを告げながら、中庭に向かう。



俺だって、見慣れ過ぎた兄らを見ながら飯を食うより、同じクラスの仲の良い女子と楽しく食べたい。一応、女なんだ。これでも。



入学してすぐ、仲良くなった女子と昼飯を食おうとしたら、図ったように兄らがやって来て、俺を拉致したのは記憶に新しい。



それからは、俺に弁当を持たされなくなった。



嫌なことを思い出してしまったと思っていると、諸悪の根源がやって来た。





「朔夜!!今日はお迎えに来たぞ☆」



「さー、一緒にご飯たーべよ♪」





普段、女子がうるさいので滅多に来ない兄らが来たことで、教室内が騒然となった。



一方、俺は手招きするドッペルゲンガー達に、内心で舌打ちをした。妙な気を起こすな。何が来ちゃった☆だ。普段来ねぇくせに何してんだ。



しかし、飯の誘惑には勝てないだろう。なにせ育ち盛りだ。あと五センチくらいは欲しいな、と思っている俺にとって、昼飯抜きはキツい。





「で??今朝言ってた炊き込み飯は??」





そこらの下手な店より旨い俺ん家の飯は、確かに俺の腹を掴んでいる。なんとも恐ろしい兄らだ。



手提げのランチボックスを突きだし、凪が答える。





「ほらほら、朔夜の大好きな炊き込み飯だよ☆」



「中庭行ったら開けようね~」




兄二人はそう言いながら俺の背中をぐいぐい押してくる。



まったく、普段はこんなことしないっていうのに、今日は調子が狂う。



今日二回目のため息を吐きながら、兄達に連れられながら中庭へ向かう羽目となった。