ひぃい!!!
何?!何?!どういうこと?!!!



お母さんの突然の告白に怯えながら総ちゃんの顔を見ると、総ちゃんはハァと息を吐きながら


「美優。VENUSというのはクルセイドの作った細菌兵器の名称です。」

「は、はぁっ?!!」

「正しくはVENUSは解毒剤……らしいんですけどね。VENUSと対になる細菌兵器の名前はMuse(ミューズ)。発症するとインフルエンザのような症状が出るらしいですが中身は全くちがう致死量の高いウイルスです。それが、世界にばらまかれたら世界の人口が3分の1にまで激減するらしいですよ?しかも、細菌兵器ではなく、新型インフルエンザの蔓延として処理されて……ね?」


そんな恐ろしい一言をポンッと呟く。




え、ええっ?!!
話がワールドワイドすぎてついていけないんですけど!!!!!


何、その兵器!
ビーナスとミューズだなんて可愛い名前がついてるけど……とんでもないじゃんっ!


お母さんから聞かされたVENUSのショッキングな隠れ場所。そして総ちゃんから聞かされた恐ろしい効能。平和な日常とは明らかにブッ飛んでるその話にボーゼンとしてると


「インフルエンザと症状が似ていたら、それ以外の病気は疑わないものね。インフルエンザとは全く違うウイルスのクセにウイルスの形状はインフルエンザに酷似している。……タチの悪い兵器をよく作ったモンだわよ。」


ハァと色っぽいため息を吐きながら、ミキちゃんはポツリと呟く。




「ついでに言うとね。毒や細菌兵器はね?それ単体では闇市場で取引できないんですよ。」


その後、総ちゃんはまたまた理由の分からないことを言い始める。


「え?なんで??」


意味がわからなくて首を捻ると


「毒をバラまいた本人がその毒に侵されたら……その解毒薬が必要になるでしょう?購入者の身の安全のためにも毒と解毒剤は二つでワンセットで取引されるんですよ。逆に言えばどんなによく出来たモノでも毒だけでは取引できないんです。」


総ちゃんはこんな恐ろしいことをサラリと言い放つ。



や、闇市場……
この世の中に生きていてリアルに耳にすることがあるとは思わなかったけれど……。総ちゃんやミキちゃん。それにお母さんのこの顔を見ていると、それは冗談なんかではなく自分の身に降り掛かったリアルなのだと思い知る。



「ま、詳細は置いといて。美優。アンタの体の中にはVENUSが隠れてる。クルセイドはMuseという細菌兵器を使って金を荒稼ぎした挙句に、世界転覆を密かに狙ってる。それを実行させるにはアンタの体に隠されたVENUSを取り出す必要があるんだよ。」


お母さんは窓の外を見つめながら、そんな恐ろしいことを言い始める。そして無言の時間が過ぎた数分後。




「理由はわかったね?!クルセイドはアンタ、の体の中にあるVENUSを狙ってる。だから……明日から学校は休むんだよ?」


「……え!やっぱりそこに戻るの?!」


「当たり前だろう?
アンタの1人や2人は死んでも誘拐されてもなんだっていいけどね!その巻き添えでアタシが死ぬのだけはゴメンなんだよっ!!」


ドンッ!と机を大きくたたいて。
お母さんは母にはあるまじき発言をして、私達兄弟を絶句させたのであった……。