そこから聞こえてきたのは……
『全く!!
何なんじゃ、あのクソガキは!』
へっ?!
えっ?!
ええっ?!
「こ、この声は……!!」
聞き覚えのある、このしゃがれ声にドキドキしながら陸ちゃんの方を振り返ると
天使で悪魔で
ワンコな彼は
鼻くそを指でピンと弾く動作をしながら
「うん。勅使河原のオッサンにさっき盗聴器つけてきた~☆」
そう言って
ニッコリと微笑んだ。
「鼻くそ大で、マジックテープみたいに軽くつくやつだからすぐ取れちゃうやつだからね。ずっとは使えないかもしれないけど……。
ないよりはマシでしょう~☆」
そんな風にニコニコ笑う陸ちゃんを横目に、私は改めてこう思った。
――どんな育てかたしたら、ここまで屈折できるのよ!!
おかしいでしょう!
この性格の破綻の仕方は絶対にお母さんの育てかたが間違ってるからでしょ!!
「へっへーん。見ててね、美優。
ぜーったいに俺が勅使河原の悪事を暴いて見せるから~☆」
私に後ろから抱きついて
肩の上にアゴを置いたまま
甘えたように陸ちゃんは私をギュッと抱きしめる。
可哀想に……
陸ちゃんをこうしたのは絶対にお母さんの責任だよね……
そう思うとなんだか陸ちゃんが不憫に思えて
「うん……
期待してるよ、陸ちゃん。」
そう言って
陸ちゃんの頭をポンポンすると
『全く!!あのガキだけは生かしておけん!!芹沢さんに電話しろ!!
目にモノみせてくれるわ!!』
私の耳の奥から
こんな恐ろしい言葉が
聞こえ始めた。