そんな俺に、山井悠河は顔の前で手を合わせて頭をさげる。




「俺の幼なじみの勉強、見てやってくんね?」




…そういう事か。




峰龍大学一の秀才、とか噂立っている俺。




実際、秀才でもなんでもないが…。




俺は一瞬考えたけど、すぐに答えを出した。




「悪いが、そこまで暇じゃない。他を当たれ」




そう言って、山井悠河より先に講義室へと入った。




ガキの勉強見てる暇なんてねぇよ。




親の会社の経営だって手伝わなきゃいけないから。




大学の講義に、会社の経営。




オマケにサークルの助っ人で来てほしいとか言われてたら、もう余っている時間なんてないんだ。




俺が講義室の一番前の席へと座ると、山井悠河はその後ろへと座った。




「なー、頼むって」




まだ言うか?




懲りないやつだな。




「無理だ。」




「どうしても?絶対?」




「あぁ、絶対。」




キッパリと断言すると、さすがに諦めたのか、彼は引き下がった。




…そして、ちょうど来た女に声をかける。




「あのさ!」




「へっ!?な、なに…?」