「呼んだか?」

「えっ……?」

扉から、本多君が出てきた。


「……ずっと待ってたんだけど」

「え……」

「……俺はさ、菅原をいじめてぇわけじゃねぇんだよ。でも、少しでも引き締めてもらおうと思ったのに。……まさか、泣かせんなんて、思わなくて」

本多君の言葉が染み込んでいく。


私が、悪いのに。

どうして、本多君が悪いことをしたって思ってるの……?


「あ、あの……。えと、本多君は悪くないです。私が……」

「言わなくていい」

「え?」

「俺は指導者だから。生徒の気持ちを汲み取れるやつになんねぇと。……それより、俺に言うことは?」

本多君の顔が間近に迫った。


思わず、顔が熱くなる。


「あ、……ご、ごめんなさい。……指導、してください……っ」

「……ん。上出来」

本多君はこんな私に優しく微笑んでくれた。

少しは、私のことを認めてくれたかな……。