「心を……吸い取る?」

 俺は、もう一人の俺が言った言葉を繰り返した。

『だぁかぁらぁ、この体は一つしかないだろ? でも心は――俺とお前で二つあるだろ』

「あ、ああ」

『お前が一人睨めっこをしたから、俺はお前の心を吸い取れるようになれた訳だ。だからお前の心は小さく弱くなって、俺の心は大きく強く――』

 ん??

「待て待て……」

『……何だよ』

 話を途中で遮られたからか、不機嫌な様子でもう一人の俺は答えた。

「一人睨めっこと心を吸い取る事が、どう関係あるんだ?」

 俺がそう言うと、水に写る顔は少し怪訝そうな顔をした。

『あ、そうだ。お前知らないんだな、馬鹿だから』

「何を?」

 もう一人の俺が言った言葉の語尾に怒りを感じたが、そこはつっこまない事にした。

『一人睨めっこをする事によって起こる事だよ』

 起こる事……?
 いやだから、頭の中から声が響いたりしてるじゃないか。

『頭の中から声が響く事とか思うだろ? じゃあ何で響くようになったと思う?』

 思考を読まれた……!?

「さぁ……?」

『その理由こそが、一人睨めっこによって起こる事って奴だよ』