「那智……」

「戻ってこいよ」

切なげな表情
あたしは下唇を噛み締めた

「……やめてよ」

「え?」

「そんな思わせ振りな態度やめてよ……期待しちゃうじゃんか……」

一言一言をいうたびに涙が溢れてきた

「あたしは那智が…きゃっ」

「………好きだ」

那智に強く抱き締められた

「俺は冴慧が好きだ」

強く強く抱き締められた

「だからさ…」

あたしから身体を離す

「戻ってこいよ」

これを愛の告白と思っていいのかな?
あたしのこと好きだって信じていいのかな?

「生徒会室行くぞっ」

「待って……」

「まだなんかあるのか?」

あたしは大きく深呼吸した

「先に……波美と話がしたいの」


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学校のすぐ近く
波美の家の前に来た

「綾瀬波美は生徒会室に戻ってこなかった家に帰ったはず」と那智は言っていた

あたしは震える手でチャイムを押した

ピンポーン

「はぁい」

バタバタと足音が聞こえてドアが開いた

「あら?波美ちゃんのお友達?」

出てきたのは波美のお母さんだった

「波美ちゃんならまだ帰ってきてないわよ」

「そうですか……じゃあまたきます」

あたしは頭をさげて身体の向きをかえた