波美は不安げな顔で続けた

「冴慧…そのこと知らないで北条君のこと好きだったんだよね?」

あたしは少し間をあけてから答えた

「……知ってたよ」

「え?」

「知ってた 那智が愛美っていう人とキスしてたのも 女ったらしってことも 二重人格ってことも……あたしは知ってたかな」

「じゃあどうして?」

「それでも そんなこと関係なく那智にひかれはじめてたんだよ」

「でも…北条君のせいでやられそうになったんだよ?」

必死な顔であたしを説得しようとする波美

「違う」

あたしは首を横にふった

「たしかに那智も関わってた…でも那智はあたしを守ってくれたの きっとあたしも遊ばれてるんだろうけど それでも…『好き』なの」

口にすることによってはっきりしてくる那智への想い

「『好き』に…なっちゃうもん」

「冴慧…」

はじめて素直に自分の気持ちをぶつけた

あたしが思ってた以上にあたしは那智のことが『好き』だったんだな

「わかった……応援するよ」

波美は観念したように頷いた

「女ったらしなのは気に食わないけどしょうがないか…今まで気付かなかったあたしも悪いし…?」

ぶつぶつ言いながらちらっとあたしのことを見た