「大丈夫?」

「大丈夫………」

あたしの声は次第にかすれてきた

「……なわけないよぉ…」

今までに味わったことがないくらいの恐怖感

もうダメかもって絶望感

「……こわっ…かったんだからぁ」

那智が来てくれて本当に嬉しかった

気付いたときには涙がとまらなかった

「冴慧…」

那智は泣きじゃくるあたしをそっと抱きしめてくれた

「……なっ」

「こないだ肩貸してくれたお礼にここ貸してやる」

こんなくさい台詞
一体どんな顔して言ってるんだろ

那智のことだから涼しい顔しながらさらっと言ってるのかな?

「……あ…りがと」

助けてくれて 守ってくれてありがとう

あたしは那智の腕の中で泣いた

愛美さん
那智がキスしていた人

その人のせいだってことはまだ言えない

「冴慧…」

「ん?」

だいぶ落ち着いたころ那智が声をかけてきた

顔をあげると太陽の光に照らされた那智の笑顔

―ドキン

「キスしていい?」

「へっ?!」

こんなタイミング?
軽すぎっ

「さっきのやつらとは…してないだろ?」

「…うん」

那智はあたしの頭を自分の顔に引き寄せた

2回目の至近距離