「陣はそういうのじゃない」
「はいは~い」
「本当にわかってる?」
「めっちゃ綺麗」
波美が窓の外を見た
どうやらあたしの話しなんて雑音にしか聞こえてないみたい
波美は目の前に広がる大自然にくぎづけだった
そんな彼女の視線を追ってあたしも窓から外を見る
「すっご」
都会っ子のあたしたちにしてみればこんな山に来ること自体が珍しい
はじめは「なんで私立の高校なのに林間?」って思ったけどようやく訳が理解できた
「では解散」
学年主任の一言でみんながバラバラと歩きはじめた
「3157 え?この階段のぼるのぉ?最悪ぅ」
波美はその場でしゃがみ込んでしまった
「ハイヒールってどうなのよ」
私服だから波美は街中にいるような今どきな格好できていた
あたしたちはそんな波美をほったらかしですたすたと階段をのぼっていった
「人で無しぃ なっちゃんと美和と冴慧の悪魔ぁ…」
後ろから波美の叫び声が聞こえる
あたしたちは顔を見合わせて軽いため息をついた