あたしが呆れた顔をすると陣が言った

「もしかしてくれねぇの?」

「まぁ あげるけどさ…」

あたしロマンチストじゃないし

別に

「まじっ?」

あたしが言うと陣は嬉しそうな顔をした

あたしはチョコを探してガサガサと鞄をあさる


「………あ」

「ん?どした冴慧」

身を乗り出していた陣が首を傾げた

「チョコレート忘れた」

「……お前女じゃねーだろ」

陣は肩を落としてため息をついた



「優勝しねーと部活できねえのに…貴重な1個がぁ」

「……あたしのチョコじゃなくてもいいっての?あたしよりテストが大事なんだ」

「え?いや…そういうわけじゃねぇ……かもしれなくもなくないぜ?」

図星じゃん

あたふたする陣にあたしはあるものを見せた

「じゃあこれはお預けだね」

「あぁ!!!!」


あたしが手にしてるのは陣にあげるつもりだったチョコレート

「なっちゃんにあげるよ」

「ありがと冴慧」

あたしは隣にいた菜月に袋を渡した

「すみません冴慧様っ このとうり 俺が悪かった」

土下座する陣

「じゃあ帰りあげるね イベント終わってるけど」

「…………。」

陣は何も言わなかった


たくさんのうちの1つになりたくないの

『あたし』があげた特別なチョコにしたいの