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「あ…」

下駄箱にいたのは那智

一瞬目があったのに無視してあたしに背をむけた


「……おはよ」

あたしは勇気をだして那智に呼び掛けた

立ち止まる那智
でも何も言わずに階段をあがって行った

「はぁ…」

挨拶くらいかえしてくれてもいいのに

顔くらいみてくれてもいいのに

もう……関わりたくもないのかな



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「……おはよっ」

予想外だった

あんなことをしたのに冴慧が俺に声をかけてくれるなんてな

なんて言えばいい?

どうすればいい?

今さらなんもねぇよな

冴慧と陣は……付き合ってない

『まだ』付き合ってない

陣は馬鹿だ

馬鹿だし素直じゃねぇし鈍感だしうざいけどまっすぐまっすぐ冴慧を見てた

冴慧も……

そんな陣のこといつも見てた

怖かったんだよな

陣にとられるの

だからすぐ冴慧に告白した

それでも冴慧は陣を目で追っていた

どっちつかずな俺

こんな気持ちはじめてなんだ


馬鹿みてぇに好きなやつの幸せ願ってよ

身をひくなんてことしたのはじめてだ

冴慧にこんな情けない顔見せられるかよ

俺はなにも言わずに階段をあがった