「いいの?冴慧」

「何が?」

あたしは手をとめて顔をあげた

「北条君はいいの?」

「那智?なんで?」

波美の言葉があたしの心に響いた

「優勝したらキスしちゃうんだよ?冴慧じゃない誰かと みんなの前で」

「……。」

「嫌じゃないの?」

あたしも気づいてた
だからずっと気にしてたんだ

那智のこと

那智のことを


「……嫌だよ 嫌に決まってるじゃんか」

あたしは止めていた手を動かしはじめた


「そうだよ 嫌に決まってる 那智のこと好きだったんだもん あたしの初恋だから…綺麗さっぱり忘れられるわけないよ」

「……冴慧」

「でもしょうがないじゃん こうなっちゃったんだから 波美があたしに『素直になれ』って言ったんだよ?」

言葉にしてるうちに確かになる気持ち

あたしの本当の思い


「覚悟決めて……悩んだ結果 前に進もうって思えたし振り返らないって決めたの
陣のこと1番好きって気づいたんだから 気づいたんだけど…」

「……。」

「おかしいな…あたし那智に裏切られたのに……それなのに………」

笑顔をつくるあたしに波美は何か言いたそうな顔をした


「それでももっと……少しでもたくさん那智のそばにいたかったな」