あたしが何を言っても陣に止まる気配はない
「待てって……」
あたしは右手を振り上げた
「……いってんでしょっ」
そして思い切りそれを投げた
カツン
陣めがけて投げたそれは陣の髪の毛に少しかすって通り越した前のほうに落ちた
「あ…」
陣の足が止まる
「はぁ…はぁ…やっと追い付いた」
あたしは彼の背中に抱きついた
陣にむかって投げたのはあのピアス
立ち止まった陣は転がっているそれを見ながら言った
「冴慧……あれって」
陣は驚いた声であたしに言った
「なんで…なんで逃げるの?」
あたしは陣の言葉に答えずに言った
「なんであたしから逃げるのよ……」
「それは…さっきも言っただろ 俺はお前が…………
「好き」
あたしは陣の言葉を遮った
「むかつくけどガキだけど…陣が好き」
あたしは背中に呼び掛けた
陣は……何も言わずに歩いていった
そしてピアスのところで立ち止まった
拾い上げて振り返る
「冴慧っ……お前馬鹿だろ」
「え?」
「期待させんなっつったろ?」
陣は再びあたしのところに歩いてきた
「んっ……」
急かすように顎を動かして右手を差し出した
「え?」
「手ぇ出せよ」
「うん」