-----------------------

「冴慧……」

目の前で冴慧が泣いてる

那智のせいで泣いてる

那智のために泣いてる

俺は冴慧を抱きしめてやることができなかった

冴慧に言葉をかけることを躊躇した

ただただ
那智を想う冴慧を見て胸が締め付けられた

冴慧を見ることが苦しくて辛いんだ



「はぁ……頼むから泣かないでくれよ」

ため息まじりで言った

「………っ」

口から漏れる自分の情けない声

冴慧は必死で涙をこらえようとしている


俺じゃ……どうせこの程度なんだよな

冴慧に無理させて我慢させて
泣き止ませることしかできねぇよ


「冴慧のことまだ好きなんだろ?」

那智に聞いた

「……あぁ でもな」

那智は俺に言った

「俺に冴慧といる資格はないんだ」

って

「俺は冴慧を束縛することしかできねぇ できないんだよ だから冴慧と離れるんだよ 冴慧のためを思って俺は………

「ふざけんなっ」




那智はまだ冴慧が好きだ

冴慧も那智が好きだ

こんなこと俺でもわかるっつの

だから俺は冴慧を抱きしめることはできない

でも…………

那智の本当の気持ちを冴慧に伝えることもできねぇよ


俺は冴慧が好きだから