「………。」

「ちょっとも…少しもあたしのこと好きじゃなかったの?」

「………。」

「冴慧…」

あたしを止めようとする陣を無視して続ける

「全部嘘だったの?ねぇ……なんとか言いなさいよ」




「……あぁ」

やがて那智は口を開いた

「全部嘘だよ」

「………っ」

「遊びだったって言ったろ?」

那智は一回もあたしの顔を見ずに屋上から消えていった



「冴慧………大丈夫かよ?」

「…………っ」

陣が下から心配そうにあたしを見つめる

「…………ははっ」

「冴慧?」

「馬鹿だよねあたし 遊びだってことにも気づかなくて1人で悲劇のヒロイン気取りで………馬鹿みたい」

「おい…」

「そもそもあたしは被害者じゃなかったのに…那智が裏切ったって思い込んで1人で……悲しんで 立ち直れなくなっちゃって」

「もういいよ」

「陣が……那智のとこ言ったって聞いて あたしが止めなきゃって………原因はあたしだとか自意識過剰になって」

「やめろってば」

「ははっ………馬鹿だよ本当に」

乾いた笑い声はいつしか涙に変わっていた

悪いのは那智じゃなかったの

裏切ったのは那智じゃなかったの

全部あたしの思い込みだったんだ