「……陣っ」

あたしはいてもたってもいられなくなり教室を飛び出した

「冴慧待って どこ行くの?」

「トイレッ」

みんなそんな嘘を信じるわけない

気づいてるけど追いかけてこなかった

心あたりが2つある

生徒会室か屋上

あたしは一瞬迷ってもう一度走り始めた

屋上だ……
2人は絶対屋上にいる

陣を止めなきゃ
止めなきゃ止めなきゃ

陣は何を考えているのかわからない

わかんないけど陣と那智を今あわせちゃだめだと思う

「……あっ」

「冴慧?」

屋上へ向かう階段の手前で雅と出くわす

「ごめん 急いでるから」

あたしはすっと横を通りすぎた

「冴慧っ行くな」

「……。」

あたしを呼び止める雅の声

「行くなや もうあの2人に関わんな 冴慧が辛い思いするだけやんか」

「………。」

あたしは振り返らずに雅の声を聞いている

「見てられんよ そんな冴慧見たくないんや………」

雅の訴えかけるような声にあたしは下唇をかんだ

「好きなんや 本気で冴慧のこと」

あたしは振り返らなかった

振り返れば決心が鈍るから

「ごめんね 雅 やっぱりあたしは……傷ついてもいいから行かなきゃいけないの」

「……冴慧」

「行かなきゃいけないのっ」