本当なら今すぐここから立ち去りたい

那智の胸に飛び込んで涙が枯れるまで泣きたいよ

あたしならそうする

いつもあたしは逃げてる

でも………

波美はあたしに「幸せにならなきゃだめだ」って言ってくれたの

こんなあたしに言ってくれた

でもね波美
あたし1人だけが幸せになることはできないよ

くさいかもしれないしベタかもしれないけど
みんなの幸せがあたしの幸せだから


もう逃げないって美和と約束したじゃない


あたしは思いきりドアのぶをまわした


「さっ………冴慧?」

大きく目を見開いた杏

「………。」

口には出さないけど蓮君も驚いている様子

「な……んで?冴慧いつからいたの?」

動揺が隠せない杏

あたしはまっすぐ杏を見た

「杏………ごめんなさいっ」

あたしは杏の質問を無視してそのまま頭を下げた

「ちょっ冴慧?」

「ごめんなさい ごめん 杏がそんなに苦しんでるなんて知らなかった」

構わず続ける

「ごめん……そんなに傷ついてるって…もっと早く気づければよかったのに」

「………冴慧」

杏の表情は見えないからわからない

怒ってるよね?

あたしのせいで陣とうまくいってないんだから

「……やめて冴慧 顔あげてよ」