ガチャ…

あたしはゆっくり扉を開いた

鈴梛先輩の後ろ姿が見える

「………。」

なんとなく声かけにくいな

鈴梛先輩の長い茶色の髪の毛がなびく

「………ばか」

先輩の独り言があたしの耳に届く

「馬鹿彼方……」

先輩の声は泣いてるようだった


あたしは鈴梛先輩に背中をむけた

今は1人にしてあげたほうが……いいよね?


「………冴慧ちゃんっ?」

ドアに手をかけた瞬間 呼び止められた

「………。」

ばれた……
あたしってほんとにドジだ

フリーズしていると先輩が言葉を続ける


「授業さぼってなーにしてんのっ?」

さっきの声とは一転して明るい声色

泣いていたのがわかるから辛い

「冴慧ちゃん?」

あたしは振り返らずに言った

「彼方先輩と話さなくていいんですか?」

「………え?」

「すいません さっき図書室で見ちゃったんです」

「そ………っか」

「鈴梛先輩は……彼方先輩が好きなんじゃないですか?」

「…………。」

あたしは力をこめて言った

「いい加減自分の気持ちに素直になってくださいよ」

あたしは振り返った

あたしの視界にうつるのは泣き笑いのような先輩の表情

「…………できないよ」

絞り出すような声
紡ぎ出すような言葉