「いたけど今はいないかな…」

そう言って切なげに笑った

「あたしはね……恋なんかする資格ないから」

あたしは黙ったままいた

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「冴慧っ」

教室に入ると今にも泣き出しそうななっちゃん

「ごめんなさい……あたし 自分のことばっかりで みんなの気持ちとかわかんなくて」

「あたしこそごめんね……ひどいこと言って」

ニコッと微笑むとなっちゃんはゆっくり顔をあげた

「あたしね 冴慧に甘えるなって言われたときに そのとおりだなって思った」

なっちゃんは涙をこぼさないよう少し上をむいてから言った


「あたしも冴慧みたいに強くならなきゃなっ」

美和を忘れる決意じゃなく
泣いてばかりの生活じゃなく

強くなるという選択


『選べる』という行為ができたなっちゃんはあたしなんかよりずっと強いと思う

ずっとずっと強いと思う


「冴慧……あのね 話しがあるの」

「ん?」

「2人きりで話したいことがあるんだよ」

波美が言った

「え?じゃああたしはちょっとトイレ行ってくるから」

なっちゃんは涙に濡れた真っ赤な目を擦り教室から出ていった



「話しって?」

うつむいた波美の長い睫毛が翳る

「あたしにとっては……すごく大事なことなんだけどね?」


波美はうつむいたまま話しはじめた