「修二、まだ望みは捨てないで。私も看病頑張るから、修二も治療を頑張って」
 私は修二の手を繋いで、今にも泣き出しそうな顔で言った。
「彩香、誰が望みを捨てるって言った? 俺は、まだまだ死ぬ気はないよ。彩香だっているし、何より優人の成長を見たいからな」
 修二のその言葉を聞いた途端、私は泣き出してしまった。修二は弱々しい声で話し続けた。
「彩香が泣いてどうするんだよ。俺は絶対諦めない、絶対病気を治してみせる」
「うん、私も頑張る。一緒に頑張って病気を治そう」
 私はそう言うと、修二の腕のもとでずっと泣き続けた。
 翌日の朝、重たい体を無理やり起こし身支度を済ませて、大学に行くため駅へと向かった。
 駅に着くと、美咲たちがすでにいた。美咲たちが私のことを見かけると、大きく手を振った。
「彩香、どうした? 今日元気ないじゃん」
 美咲が心配そうな顔で私の顔を覗いてきた。私は修二のことを話そうかどうか迷ったが、話すことに決心した。
「修二の病気のことなんだけど、もう余命は長くないんだって」
「それ、本当? 大学に行ってる場合じゃないでしょ」
 美咲が急に顔が蒼褪めていった。
「うん、そうなんだけどさ。私には何も出来ることが無いんじゃないかなって思って」
「何言ってるの、彩香は。修二の傍にいてあげてるだけで、修二は生きようと思えるんじゃないかな」
「そういうもんなのかな……」
 私は力弱く答えると、美咲は私の背中を強く叩いた。
「そういうもんなの。彩香がしっかりしないと、修二の彼女でいる資格なんてないよ。大学なんて程々に通っていれば良いんだから、ちゃんと修二のお見舞いに行きなよ」
「そうだよね。美咲に言われると、そんなような気がしてきた。これから修二のお見舞いに行ってくる。ありがとう、美咲」
 美咲に力強くそう言うと、私は病院に向かって走り出した。
 私は息を切らせながら病室に入った。
「彩香、今日は大学じゃなかったのか?」
「大学だったけど、サボって修二のお見舞いに来た。まあ、美咲に大学に行ってる暇があるんだったら、修二のお見舞いに行きなさいって言われたんだけどね」
「そうか。美咲って案外人情の厚い奴だからな。でも、彩香が来てくれて嬉しいよ」
 修二は微笑みかけてくれた。やっぱり修二の笑顔を見ると気持ちが落ち着く。