高三の秋頃から修二が学校を休み始めた。電話やメールをしても返事はあまり返ってこない。たまに返ってきても、「調子が悪いんだ」の一点張りで何も話してくれなくなった。
「秀。最近修二が学校来てないけど、何か知ってる?」あまりにも心配になったので、一番修二と仲の良かった秀に聞いてみた。
「いや、俺は知らないな。俺もメールしてるんだけど、あまり返ってこないんだ。修二の家に直接行ってみたらどうだ?」
「そうだね」彩香は短く答え、放課後修二の家に向かった。
 修二の家の前に着くと、インターホンを押した。「はい。どちら様?」修二のおばさんが出た。「彩香です。最近修二が学校に来てなかったので、心配したので来てみました」そう言うと、おばさんが玄関から出てきた。
「彩香ちゃん、心配してくれてありがとう。でも、今は誰にも会いたくないって言ってるの。わざわざ来てくれたのに、ゴメンね」
「少し会うだけで良いんです。一瞬修二の顔を見れたらすぐに帰りますから」
 彩香がそう言うと、「少しだけ待っててね」おばさんが家に戻っていった。数分後、玄関から再びおばさんが出てきた。
「彩香ちゃん、家に入って。少しだけなら修二も大丈夫だって」そう言って私を家に入れてくれた。
「じゃあ、修二は自分の部屋に横になっているから、行ってあげて」
「分かりました」彩香は軽く会釈をして、二階に上がった。
 彩香が修二の部屋に入ると、修二は上半身を起こしていた。この前見た時より少し顔色が悪いと感じた。
「修二、大丈夫? 顔色悪いけど、本当に調子悪いの?」心配そうに彩香は聞いた。
「だから調子悪いだけだって言ってるだろ。それ以外でも何でもないよ。彩香が心配することじゃない。安心しろ」そう言って私の頭を優しく撫でながら、頬に軽くキスをした。
「だったら良いんだけどさ、ずっと連絡してくれなかったから、私ずっと不安だった」
「ゴメン、それは悪いと思ってる。でも、まだ体調が優れないから当分学校に行けないんだ」
「そうなんだ。じゃあ、私は帰るね。調子良くないのに家にまで押しかけちゃってゴメンね」寂しそうにそう言うと、修二の部屋から出ていった。
 翌日、修二はまた学校を休んだ。何かが変だと感じながらも、修二の言葉を信じるしかなかった。