「いてて…」
流石に無傷は無理だったけど、なんとか黒川を沈めることができた。
「瑠榎!」
「お兄ちゃん」
真っ先にお兄ちゃんが私に駆け寄ってくれる。
お兄ちゃんも黒川の部下とやり合っていたらしく、整えられていた髪は崩れ、服に少し返り血がついていた。
外で行われていた抗争も終わったらしく、大勢の人が集まってきた。
「無茶しすぎだ…!」
「ごめん」
お兄ちゃんの大きな手が私の頬の傷を撫でる。
「記憶、戻ってたんだな」
「昨日ね」
お兄ちゃんを見上げて笑えば、泣きそうな顔をしていた。
「今まで、悪かった」
「うん。あとで説明してね」
「あぁ」
今にも泣きそうなお兄ちゃんに頭を撫でられ、もう大丈夫なんだと安心した。
「帰ろう」
「うん!」
たくさんの人の1番後ろを歩くお兄ちゃんの後ろ姿を追いかけようとした時。
後ろからきぬ擦れの音がして、小さくカチャ…という音が続けて聞こえた。
嫌な感じがしてバッと振り返れば、ぼろぼろの姿で銃を構えた黒川がいた。
銃口は私ではなく、お兄ちゃんを向いていて…。
「藤堂組…」
「お兄ちゃん!!」
とっさに走った私は、パンッという音とほぼ同時に左肩に激痛が走った。